【感想】『スロウスタート』は浪人生の希望だ
『宇宙よりも遠い場所』『ゆるキャン△』『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』など昨年2018年の冬クールに放送されていた作品は傑作が非常に多かったです。
そんな中、影に隠れて(きらら枠なのでそうでもないかもしれないですけど)放送されていたのが『スロウスタート』です。
実はこの作品リアタイで見ていたんですけど色んな理由により途中で切ってしまっていました。見るのが辛かった、、、
しかし、先日、やっとの思いで『スロウスタート』を一気見しました!
テーマもきらら作品としては少し変化球であり、非常に感情を揺さぶられるものだったので社会生活で周りのみんなに出遅れてしまったスロウスタートの人たちにおすすめのアニメです。
スロウスタートとは
原作は『まんがタイムきらら』に連載。青春日常アニメ。
一之瀬花名は高校入試の前日におたふく風邪になり受験に失敗し高校受験浪人を経験する。一年後、高校に入学し、自分が浪人であることを隠して高校生活を始めるというスロウスタートな作品。
主人公の心理描写をメインにしている
花名が浪人の設定いらなくないか?という意見もあるんですけど、僕はこの設定があるからこそこの作品は傑作になっていると感じます。
花名とたまての誕生日を栄依子と冠が祝う回でたまてに「同い年ですね!」と言われ花名が思わず泣き出すシーンや栄依子に「遠回りしてよかったでしょ」と言われるシーンがあります。
何気ない日常の一言でドキッとして後ろめたさを感じたり、言葉の意味以上に嬉しくなったり、花名が抱えているものがあるからこそ、緩くコミカルに描かれる日常の中にスパイスがあって良いんだと感じます。
また、花名は志温や大会には話していますが、友だちには自分が浪人であることを一切話していません。
友だちに隠し事をするのはどうなんだろう、話して関係が壊れるのが怖い、何気ない一言でドキッとしてしまう。
浪人の事実は浪人生たちと視聴者だけの秘密なので、たまてや栄依子、冠たちより花名に感情移入しやすい作りになっているんだと思います。
あと特に高校受験浪人、大学受験浪人、就職浪人の人たちにとっては、良くも悪くも胸に刺さるストーリーになっていますね。
会話劇が弱いけどそこが良い
きららの他作品と比べて、日常パートの面白さがイマイチな印象がありました(原作者さんごめんなさい。)
でもそこが良い!というか日常パートというより優しい思いやり友情パートって感じですよね。
この作品はメインテーマに「ゆっくり遠回りしてよかった」というのを据えてるんですけど、それと同じくらいに「友情」も大きなテーマです。
メインキャラの優しい友情を描くことで、浪人していることを隠している花名の後ろめたさが引き立ち、感情移入しやすくなっているし、遠回りしたけどみんなに会えたことは本当に嬉しいしありがとう!ということを表現しています。
変にゆるい日常ギャグ作品にするより友情という優しい世界を描く作風になっていて、作者が伝えたいものが非常に上手く伝わっていて本当にすごいアニメだという印象を受けました。
ありそうでなかったテーマ
『ラブひな』や『めぞん一刻』など主人公が浪人生だったり浪人生が登場する作品はちらほらあるんですけど「浪人」自体をテーマにしている作品はほとんど無いですよね。
しかもきらら作品なのがまた驚きです。でもそのギャップが本当に良い。。。
僕自身も大学受験浪人と就職浪人を経験してるんですけど、今まさに浪人中の人や浪人経験者にとってこれほど救われるテーマはないです。
『遠回りしてよかった』
スロウスタートは浪人生みんなの希望だ。
まとめ
ありそうでなかったテーマとその表現方法が本当に良い傑作でしたね。
やっぱり伝えたいことがはっきりしている作品は面白いんだと改めて感じましたし、浪人のマイナスイメージをポジティブなものにしようとしているところでこの作品力強さをじっくり味わせていただきました。
現時点(2019/4)で原作も終了していませんし、花名が浪人であることを打ち明けてもいません。
花名がみんなに本当のことを伝えるのか、伝えないのか、もし伝えるならどんな風にどんな演出でなのか、、、
アニメの中で打ち明けるシーンがあればもっともっと良かったかなと思うし、でも打ち明けたらこの作品はそこで力を失うのかな、、、などと思ったりもします。
とにかく、きららの中でも本当に良い作品なので遠回りしている人たちにおすすしたい作品です。