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中村文則 おすすめの小説作品を紹介!

 

今回は中村文則さんのオススメ作品の紹介です。

 

最近は『教団X』や『R帝国』で有名ですね。

 

当時、僕は自己啓発書か参考書、時々小説くらいしか読まなかったんですけど、周りの影響で大学生中盤くらいから色々本を読むようになりました。

 

その時に他のどの作家よりもどハマりしたのが中村文則さんでした。

 

彼の作品は総じて暗い。

 

人間の闇をベースに、自分の中から出てくるものを情動的に書いているようでいて、作品の中に緻密さや繊細さがあります。

 

昨今の小説や他のメディア作品は全体の構成やクオリティを意識し、何がいいか何が悪いかを評価して平均化されていっているような気がするのだけど、中村文則さんの作品はどこか違う別の舞台、世界線で起こっているような超越した印象を感じます。

 

ではオススメ作品の5選です!どうぞ!

 

『銃』

 

銃 (河出文庫)

銃 (河出文庫)

 

 

 

ある日、銃を拾った男の物語。

 

今まで普通に生きてきた主人公が突然、銃という非日常に出会い、壊れていきます。

 

銃を撃ちたいという気持ちと今の日常を維持したいという気持ちが揺れ動く葛藤が主軸に描かれています。

 

読了後の後味はスッキリしたり楽しい気持ちになるわけではないです。そこが最大の魅力ですが…

 

中村文則さんは「日常の大切さを知ってほしい」とかそういうことを言いたいんじゃなくて、「ただこれが銃という作品です」というメッセージしかない気がしました。

 

文章がかなり淡々と書かれている…というか人間が頭の中で考えていることをそのまま文章にしているような文体なので読んでいて主人公になったような錯覚を受けます。

 

この主人公の内的思考のような文体は他の作品にも現れています。

 

それゆえ他の作品の登場人物とは精神的にリンクしてるんじゃないかという気にもなります。

 

まあいずれにしろ『銃』が中村文則の原点であるのでこれ以降の作品でも踏襲されてる部分はおおいですね。

 

『遮光』

 

遮光 (新潮文庫)

遮光 (新潮文庫)

 

 

 

 

虚言癖の男が、黒いビニールに入った謎の瓶を持ち歩く、純愛サイコホラー。

 

個人的には中村文則さんの作品で最も傑作です。

 

確かに読み始めは主人公に共感できない部分が多いです。しかし、本を読み進め、徐々に主人公を知ることで彼の行動原理に理解や共感が持てるようになります。

 

正直、この作品はかなり暗いです。

 

ですがその暗さが最大の魅力です。

 

暗い物語は、僕たち人間の闇の部分に寄り添ってくれます。人間の闇に共感してくれます。

 

明るい物語やメッセージ性の強い作品とは真逆の作品だと思いますが、それ故に芸術性が非常に高いです。

 

読書の奥深さを知る一冊だと思います。

 

 

『掏摸』

 

掏摸(スリ) (河出文庫)

掏摸(スリ) (河出文庫)

 

 

 

掏摸の天才である主人公が、様々な弱みを握られ仕事をこなしていく物語。

 

掏摸の描写は読むだけで掏摸の疑似体験をしたような感覚に陥ります。本当に素晴らしい。

 

中村文則さんの作品の中では少しだけ希望のある作品。残酷な運命から抗う人々を描います。

 

中村文則さんのほとんどの作品は「闇と光」のベクトルしか無いような気がしていたんですがこの作品にはそれ以外のベクトルが存在している気がします。

 

僕はそれが何か上手く言葉にできないので気になる人は読んで探してみてください。

 

本当にどうでもいいんですけど、『掏摸』の世界観は伊坂幸太郎さんの『グラスホッパー』などの殺し屋シリーズをシリアスなテイストにした印象です。

 

 

『R帝国』

 

R帝国

R帝国

 

 

 

舞台は近未来のディストピア。R帝国と隣国との戦争が勃発するが、主人公の矢崎は何かがおかしいことに気づく。

 

珍しくSF作品であるが、主人公は今までの中村文則さんの作品に登場する主人公たちと似ているところが多い気がします。

 

社会風刺が多く、ほとんどが一目で何か分かるようになっています。かなり社会の根源や現実を突きつけているので内面的な発見があります。

 

また、現実の僕たちが住む世界は、物語の中で「小説」として描かれています。太平洋戦争や9.11など、物語の中で類似する出来事がモブキャラによって語られます。変わった構図を取っていて面白いです。

 

正直、考えさせられることが多すぎるので消化しきれなかったんですが、とりあえずチンパンジーにならないように精進します。

 

 

『何もかも憂鬱な夜に』

 

何もかも憂鬱な夜に (集英社文庫)

何もかも憂鬱な夜に (集英社文庫)

 

 

 

刑務官の主人公「僕」と、彼が担当する犯罪者の山井が織りなす生と死と希望の物語。

 

無情な気持ちの夜に読みたい本NO.1。

 

現実世界は闇で溢れていますが、その中にも光はあって僕たちはそれを見つけたり見つけなかったりする。

 

中村文則さんが思ってること、伝えたいことが詰まったような作品です。近年の社会風刺の要素はほとんどなく、人間の内面にしっかり向き合っています。

 

この作品は、僕たちが抱えてるものに寄り添ってくれ、僕たちに共鳴してくれ、そして光をさしてくれます。本当の傑作です。

 

 

 

中村文則を読んで欲しい人

 

この作品を誰が読むべきとか誰が読むべきではないとか言うのはかなりお門違いだとは思うんですけど。

 

内向的な人

変化を求める人

ネガティブな人

 

に個人的には読んで欲しいです。

 

・内向的な人。

 

なぜかというと日頃から何事についても深く考え、繊細なタイプである人は、中村文則さんの作風に合うと思うからです。

 

自分の内面と向き合う作品が多いので共感できる部分も多いはずです。

 

・変化を求める人

 

ここで言う「変化」とは現実逃避に近い意味です。

 

『銃』においては主人公が銃を手に入れることで精神的に今までの日常と乖離していき、奇妙な非日常を過ごします。

 

また『遮光』では虚言癖の変わった男の気味の悪い生活が描かれています。しかし、読んでいくうちに読者はこの作品という異世界に迷い込み、主人公に共感する部分が出てきます。

 

ファンタジーやSFの世界に迷い込むわけではないですが、現実世界に生きていたら絶対経験しないようなダークな非日常に誘ってくれます。

 

・ネガティブな人

 

ネガティブな人が読んだらネガティブを拗らせてしまいそうな内容です。

 

しかし、作品に相反して著者の中村文則さんはすごく明るいらしいです。

 

中村文則さん曰く「自分が暗いことで人に迷惑かけることをやめた」らしいです(闇を感じますね)

 

まあでもそうですよね。毎日ネガティブなことを考えて暗い顔してても楽しくない世界が広がるだけです。明るくないとやってられないですね。

 

作品からもそんなメッセージが伝わってくることもあります。

 

あとがきで「生きることは実に面倒なことも多いけれど、共に生きましょう」と言っています。

 

何となく中村文則さんを表してるしっくりくるセリフなので大好きです。